「最近、疲れが抜けなくなった」
「肌のハリが急になくなってきた気がする」
年齢を重ねれば当たり前のこと…と思いがちですが、もしかすると、あなたの体の中で「ゾンビ」が増殖しているせいかもしれません。
「ゾンビ細胞」。
まるでSF映画のような名前ですが、これは最新の老化研究で実際に使われている医学用語(通称)です。
この細胞が厄介なのは、ただ自分が役に立たなくなるだけでなく、「周りの元気な細胞まで道連れにして老化させてしまう」という点です。
今回は、メイヨークリニックなどの最新研究で明らかになった「ゾンビ細胞」の正体と、スーパーで買える食材でできる「細胞のお掃除方法」について解説します。
体に居座る迷惑な住人「ゾンビ細胞」とは?
私たちの体はおよそ37兆個の細胞でできていますが、細胞は古くなったり傷ついたりすると、通常は「アポトーシス(細胞死)」というプログラムが作動し、自ら消滅して新しい細胞と入れ替わります。
しかし、稀に「死ぬべきなのに死なない細胞」が現れます。
アポトーシスを起こさず、かといって正常に働くわけでもなく、体内に居座り続ける老化細胞。これが「ゾンビ細胞(Senescent cells)」です。
ゾンビ細胞が「老化を伝染させる」恐怖
このゾンビ細胞が恐ろしいのは、「SASP(サスプ)」と呼ばれる有害な炎症物質を撒き散らすことです。
この物質を浴びた周囲の健康な細胞は、ダメージを受け、機能を停止し、やがて自分もゾンビ細胞になってしまいます。
つまり、1つのゾンビ細胞が放置されると、その周りからジワジワと老化が広がっていく(伝染する)のです。
これが、加齢とともに全身の炎症が進み、急激に見た目や体力が衰える大きな原因の一つと考えられています。
最新研究:「ゾンビ」は除去できる
ここで朗報です。
近年の研究で、このゾンビ細胞を選択的に狙い撃ちして除去する「セノリティクス(Senolytics)」という技術や成分が見つかってきました。
メイヨークリニックの研究チームが行った動物実験では、老化したマウスからゾンビ細胞を除去したところ、以下のような驚くべき結果が出ました。
- 身体機能が回復し、毛並みが良くなった
- 寿命が最大で36%延びた
- 腎臓や心臓の機能が改善した
つまり、ゾンビ細胞さえ掃除できれば、私たちは「暦の年齢」に関係なく、体を若返らせることができる可能性があるのです。
今日から食べる「細胞クリーナー」食材
まだ「若返り薬」として実用化はされていませんが、実は身近な食品の中に、この「セノリティクス作用(ゾンビ細胞除去効果)」を持つ成分が含まれていることが分かっています。
研究で特に注目されている成分を2つご紹介します。
1. フィセチン(イチゴ、リンゴ)
ポリフェノールの一種である「フィセチン」は、最強の天然セノリティクス成分の一つと言われています。
ミネソタ大学医学部の研究では、マウスにフィセチンを与えたところ、損傷した老化細胞が減少し、健康寿命が延びることが確認されました。
- 多く含む食品: イチゴ、リンゴ、柿、玉ねぎ、キュウリ
(特にイチゴには豊富に含まれています)
2. ケルセチン(玉ねぎ、ブロッコリー)
血液サラサラ成分として有名な「ケルセチン」も、ゾンビ細胞除去に効果が期待されています。特にダサチニブ(白血病の薬)と併用する研究などが有名ですが、食品として日常的に摂るだけでも、抗炎症作用による老化予防が期待できます。
- 多く含む食品: 玉ねぎ(特に皮に近い部分)、ブロッコリー、緑茶、柑橘類
まとめ
- 体には、死なずに居座り老化を広げる「ゾンビ細胞」がいる。
- ゾンビ細胞を除去すれば、体は若返る可能性がある(セノリティクス)。
- イチゴや玉ねぎなどの成分(フィセチン、ケルセチン)が掃除を助けてくれる。
「老化は止められない」というのは過去の常識です。
これからは「老化細胞(ゴミ)を溜めない」時代。
デザートにイチゴを選んだり、サラダに玉ねぎスライスを加えたり。
そんな小さな積み重ねが、体内のゾンビ退治につながり、5年後、10年後のあなたの若々しさを守ってくれるかもしれません。
参考文献
- Kirkland, J. L., et al. (2019). Cellular Senescence: A Translational Perspective. EBioMedicine.
- Yousefzadeh, M. J., et al. (2018). Fisetin is a senotherapeutic that extends health and lifespan. EBioMedicine.