「免疫ケアのために、ヨーグルトを食べています」
健康意識の高い方なら、一度は試したことがある習慣でしょう。
しかし、最新の科学研究によって、「ヨーグルト(動物性乳酸菌)よりも、はるかに高い免疫活性パワーを持つ乳酸菌」が、日本古来のあの食品から発見されたことをご存知でしょうか?
その場所とは、長野県の一般家庭で受け継がれてきた「ぬか床」の中です。
今回は、東京大学薬学部の研究チームが発見した、驚異的なパワーを持つ「植物性乳酸菌」について、その科学的根拠とメカニズムを解説します。
1万株の中から見つかった「奇跡の1株」
この発見の裏には、気の遠くなるような実験の歴史がありました。
東京大学の研究チームは、「薬に頼らず、食品で自然免疫を活性化できるものはないか?」というテーマのもと、世界中から集めた約1万種類以上もの野菜や発酵食品、乳酸菌を調査しました。
なぜ「カイコ」が実験に使われたのか?
このスクリーニング(選別)実験で活躍したのが、なんと「カイコ(蚕)」です。

「え、虫?」と思われるかもしれませんが、実はカイコは人間と同じ「自然免疫(生まれつき備わっている防御システム)」だけで生きている生物です。しかも、薬や毒に対する反応が人間と非常によく似ているため、近年、創薬研究の現場で注目されています。
研究チームは、1万種類の乳酸菌を一つ一つカイコに与え、その後に病原菌を注射して、「どの乳酸菌を食べたカイコが生き残るか」をテストしました。
その結果、圧倒的な生存率を叩き出したのが、長野県のぬか床から分離された、ある特定の「ラクトバチルス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)」という種類の乳酸菌でした。
一般的な乳酸菌と何が違うのか?
「乳酸菌なんて、どれも同じでしょ?」
そう思うなかれ、この「ぬか床由来の乳酸菌」は、免疫細胞を叩き起こす力が桁違いであることがわかっています。
1. 免疫活性率が圧倒的に高い
研究データによると、この特定の菌株は、一般的なヨーグルトに含まれる乳酸菌と比較して、数十倍〜高い免疫活性化能力(サイトカイン産生誘導能)を示しました。
簡単に言うと、体内のガードマン(免疫細胞)に対して、「敵が来たぞ!起きろ!」と伝える声の大きさが、他の菌とは比べ物にならないほど大きいのです。
2. 「死菌」でも効果を発揮する
多くの乳酸菌は「生きて腸まで届く」ことが重要視されますが、この菌の面白いところは、「死菌(加熱処理された菌体)」であっても、免疫スイッチを押す能力が変わらないという点です。
つまり、胃酸で死んでしまっても、料理に入れて加熱しても、その成分自体が腸の免疫細胞を刺激してくれるのです。
なぜ「ぬか床」だったのか?
日本の伝統食「ぬか漬け」は、古くから健康に良いと言われてきました。
過酷な塩分濃度や酸性環境の中で生き抜いてきた「植物性乳酸菌」は、温室育ちの「動物性乳酸菌(牛乳由来など)」に比べて、細胞壁が頑丈で、生命力が強い傾向にあります。
昔の日本人が風邪をひきにくかったり、体が強かったりしたのは、毎日この「強い菌」をぬか漬けから自然に摂取していたからかもしれません。
現代科学が、おばあちゃんの知恵袋の正しさを、分子レベルで証明したと言えるでしょう。
まとめ
- 東大の研究で、1万株の中から「最強レベルの免疫活性能」を持つ乳酸菌が見つかった。
- その正体は、長野県のぬか床にいた「植物性乳酸菌(パラプランタルム種)」。
- カイコを使った実験で、高い感染防御効果が実証されている。
もしあなたが、「普通のヨーグルトやサプリでは変化を感じられない」「より強力な免疫ガードが欲しい」と感じているなら、この「東大が発見したぬか床由来の乳酸菌」に注目してみてはいかがでしょうか。
毎日ぬか漬けを食べるのは大変ですが、最近ではこの特定の菌株を高濃度に配合した食品なども開発されています。
日本人の体に合った「和の乳酸菌」のパワーを、ぜひ体感してみてください。
参考文献
- Sekimizu, K., et al. (2017). Lactobacillus paraplantarum 11-1 Isolated from Rice Bran Pickles Activated Innate Immunity and Improved Survival in a Silkworm Bacterial Infection Model. Frontiers in Microbiology.