【最新研究】「鼻が5℃冷える」と免疫力が半減する?冬の感染症対策の新常識

「寒い格好をしていると風邪をひくよ!」

子供の頃、親御さんなどにそう言われた経験はありませんか? 「体を冷やさない」というのは昔からの知恵ですが、実はこれ、最新の科学研究でもその正しさが証明されたのです。

これまで、冬に風邪やインフルエンザが流行するのは、主に「空気が乾燥しているから」や「室内で人が密集するから」だと考えられてきました。もちろんそれも要因の一つですが、2022年末に発表された研究により、「鼻の温度」が非常に重要であることが判明しました。

今回は、米国アレルギー学会誌に掲載された研究をもとに、冬に免疫力が下がる本当の理由と、科学的根拠に基づいた対策について解説します。

研究で判明!寒さと免疫の驚くべき関係

2022年12月、『The Journal of Allergy and Clinical Immunology』という権威ある医学誌に、マサチューセッツ眼科耳鼻科病院などの研究チームが論文を発表しました。

その衝撃的な内容は、「鼻の中の温度がわずかに下がるだけで、ウイルスの防御機能が著しく低下する」というものです。

鼻の奥にある「天然の防御システム(EV)」とは?

研究チームが注目したのは、鼻の奥の細胞に備わっている「細胞外小胞(EV)」というシステムです。

ウイルスが鼻の中に侵入すると、鼻の細胞はこのEVをスプレーのように一斉に放出します。EVはウイルスを取り囲んで捕まえたり、無力化したりする働きを持っており、研究者はこれを「巣を守るために一斉に飛び出してくるハチの大群」に例えています。

つまり、私たちの鼻の中には、ウイルスが細胞に感染する前に最前線で戦ってくれる、優秀な自衛隊のようなシステムが備わっているのです。

たった5℃の低下がリスクに? 実験でわかった数値

しかし、この強力な防御システムには「寒さに弱い」という弱点がありました。

研究チームが健康な被験者を低温の環境(約4.4℃)に15分間さらしたところ、鼻の中の温度は約5℃低下しました。たったこれだけの温度変化で、防御システムに以下のような変化が起きたのです。

  • EV(防御部隊)の放出量が約42%減少した
  • EVに含まれる抗ウイルス物質の質が低下した

つまり、鼻が冷えるだけで、ウイルスと戦う戦力が半分近くまで削がれてしまうということです。これが、「寒いと風邪をひきやすくなる」生物学的な直接の理由だったのです。

なぜ「冬」に感染症が急増するのか?

これまで、冬の感染症対策といえば「手洗い・うがい」が基本でした。しかし、この研究結果は、そこに「鼻を温める」という新しい常識を付け加える必要があることを示唆しています。

マスクの役割が変わる?「保温」という科学的根拠

コロナ禍以降、マスクは主に「飛沫を飛ばさない・吸い込まない」ためのフィルターとして認識されてきました。しかし、この研究を踏まえると、マスクにはもう一つの重要な役割があることがわかります。

それは、「ノーズウォーマー(鼻の保温器具)」としての役割です。

マスクを着用することで、自分の吐く息によってマスク内の温度と湿度が保たれます。これにより、鼻腔内の温度低下を防ぎ、防御システム(EV)の働きを正常に維持できる可能性があります。

「冬のマスクは暖かいから好き」という感覚は、実は理にかなった免疫対策だったと言えるでしょう。

40代からの免疫ケアに「鼻の温活」が必要な理由

特に40代以降は、基礎代謝の低下により体温を維持する力が徐々に弱まってきます。若い頃に比べて、冷えによるダメージを受けやすくなっている可能性があります。

全身の免疫ケアはもちろん大切ですが、ウイルスが侵入する最初の入り口である「鼻」を物理的に冷やさないことは、コストもかからず、すぐに実践できる効果的な対策です。

今日からできる!科学的根拠に基づいた冬の免疫対策

今回のエビデンスに基づき、明日から取り入れたい具体的なアクションプランをご紹介します。

  1. 外出時はマスクを「ノーズウォーマー」として活用する
    人混みではない場所や、屋外を散歩する際でも、気温が低い日はマスクを着用しましょう。目的はウイルスの遮断だけでなく、「自分の鼻を冷気から守ること」です。
    マフラーで鼻まで覆うのも効果的ですが、呼気で湿りすぎると逆に冷えてしまうこともあるため、通気性の良いマスクがおすすめです。
  2. 部屋の温度と湿度を見直す
    起床時など、部屋が冷え切っている時間は要注意です。鼻の粘膜が冷えると防御機能が落ちるため、朝一番に暖房を入れたり、加湿器を活用して室温・湿度を保つことが、鼻の免疫システムをサポートします。

まとめ

  • 寒さで風邪をひくのは迷信ではなく、科学的事実だった。
  • 鼻の温度が5℃下がるだけで、免疫防御システム(EV)は約42%減少する。
  • 冬のマスクは「保温」のためにも着用する価値がある。

「冷えは万病の元」と言いますが、最新科学はそのメカニズムを分子レベルで解明しつつあります。
高価なサプリメントや特別な健康法を試す前に、まずは「鼻を冷やさない」
このシンプルですが強力な習慣を、今年の冬の対策に加えてみてはいかがでしょうか。


参考文献

  • Huang, D., et al. (2023). Cold exposure impairs extracellular vesicle swarm-mediated nasal antiviral immunity. The Journal of Allergy and Clinical Immunology.

本記事は、私の体験と一般的な情報をまとめたものです。
効果には個人差があることをご理解ください。
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