「自分は同年代よりも老けて見える気がする…」
「最近、ガクッと体力が落ちた」
以前の記事で、私たちの体には暦の年齢とは別に「生物学的な老化の速度(PoA)」があることをお話ししました。このPoAが速いと、将来的な病気のリスクが高まり、見た目の老化も進んでしまいます。
では、一体何がこのアクセルを踏んでいるのでしょうか?
遺伝? ストレス?
もちろんそれらも関係しますが、2024年7月に発表された最新の研究で、私たちが毎日口にしている「あるもの」が、老化スピードを明確に加速させていることがわかりました。
今回は、PoA(DunedinPACE)研究の最前線から、「老化のアクセルを緩めるための食事の新常識」を解説します。
最新研究:食事の内容で「老化速度」は変えられる
2024年7月、医学誌『JAMA Network Open』に、コロンビア大学などの研究チームによる注目すべき論文が掲載されました。
この研究の凄いところは、前回ご紹介した「加齢の進行速度(DunedinPACE)」という精密な指標を使って、食事と老化の関係を分析した点です。
研究チームは、女性のデータを詳しく解析し、「どんな食事をしている人が、老化スピード(PoA)が速い(または遅い)のか」を調査しました。
結論:「砂糖」が老化のアクセルだった
研究の結果、衝撃的な事実が明らかになりました。
「添加糖(Added Sugar)の摂取量が多いほど、老化の進行速度(PoA)が速くなる」
添加糖とは、お菓子やジュース、加工食品に味付けとして加えられている砂糖やシロップのことです。
果物に含まれる自然の糖分とは違い、これらの添加糖を多く摂っている人ほど、細胞レベルでの老化がハイスピードで進んでいることがデータで示されたのです。
逆に「老化ブレーキ」になる食事とは?
一方で、老化スピードを遅くしていたグループもありました。彼らに共通していたのは、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質を豊富に含む「栄養価の高い食事」を摂っていたことです。
研究チームは、「健康的な食事は、砂糖による老化の加速を相殺(キャンセル)する効果があるかもしれない」とも指摘しています。
なぜ「砂糖」で老化が加速するのか?
「甘いものを食べると太る」というのは常識ですが、「老ける」というのはなぜでしょうか? その理由は主に2つあります。
- 慢性的な炎症(火事)
過剰な糖分は体内で「炎症」を引き起こします。これが細胞を傷つけ、老化時計の針を早めてしまいます。 - 酸化ストレス(サビ)
糖分の代謝過程で発生する酸化ストレスが、DNAのスイッチ(エピジェネティクス)に悪影響を与え、DunedinPACEの数値を悪化させると考えられています。
つまり、甘いジュースやお菓子を毎日摂ることは、自ら老化のアクセルペダルを強く踏み込んでいるのと同じことなのです。
今日からできる!PoAを遅らせる「食事の微調整」
「甘いものを一生やめなさい」というのは無理な話ですよね。
研究結果を踏まえ、無理なく老化スピードを落とすための現実的なアクションプランをご紹介します。
1. 「飲み物」の砂糖だけは徹底的に避ける
最も老化リスクが高いのは、吸収が速い「液体の糖分」です。
清涼飲料水、甘いカフェラテ、エナジードリンク。これらを水、お茶、ブラックコーヒーに変えるだけで、1日の添加糖摂取量は劇的に減ります。これこそが、最もコスパの良いアンチエイジングです。
2. 「裏のラベル」を見る癖をつける
加工食品やドレッシングには、意外と多くの「果糖ブドウ糖液糖」や「砂糖」が含まれています。
買い物をする際、成分表示を見て、なるべく砂糖が前のほう(量が多い)に書かれていないものを選ぶだけで、知らず知らずのうちに老化ブレーキを踏むことができます。
まとめ
- 最新研究で、「添加糖」が老化スピード(PoA)を加速させることが判明した。
- 逆に、栄養バランスの良い食事は老化ブレーキになる。
- まずは「甘い飲み物」をやめることから始めよう。
「PoA(老化速度)」は、遺伝子だけで決まる運命ではありません。
今日のランチ、午後のおやつ、そして夕食。その一口ごとの選択が、あなたの未来の若々しさを決定づけています。
まずは今日一日、「飲み物は無糖」を選ぶことから始めてみませんか?
参考文献
- Kera, A., et al. (2024). Adherence to a Healthy Diet, Added Sugar Intake, and Epigenetic Age Acceleration in Women. JAMA Network Open.